大阪夷左翁寿司(大阪府大阪市:曽根崎お初天神近く)
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その6 「松前寿司とバッテラ」 一覧に戻る
O: 秋風が、爽やかに感じられるようになりましたね。
T: 何ゆうてんねん。もう9月も下旬やというのに、何やこの暑さは!!
O: もう、風情のかけらもない人やな。
T: せやかて、真夏日がずっと続いてるなんて、信じられへんわ。
O: 『秋来ぬと 目にはさやかに見えねども 風の音にぞ驚かれぬる』ぐらい、風流なこと言われへんの。
T: おぉそうきたか。お客様の受け売りやろ。
O: ばれた!!
T: まぁ「暑さ寒さも彼岸までと」いうから、もう涼しくなるやろうな。
O: もう少しの辛抱やね。
ところで、今回は、「松前寿司」と、「バッテラ」の話をお願いします。
T: そやったな。では、早速、はじめよか。
まず、松前寿司は、昔、あるお店で、松前船によって松前(北海道)から、大坂に運ばれた松前昆布を、鯖寿司の上から巻いたことから、「松前寿司」と呼ばれるようになったらしい。
「松前すし」は、そのお店の登録商標やったそうや。
O: へぇー でも、今ではどこでも「松前寿司」として売られてるけど?いいの?
T: 登録商標ゆうても、昔のことやから、あいまいになったんやろうなぁー
O: じゃぁ、松前昆布で巻いたものは、全部「松前寿司」と呼ばれるんじゃないの?
T: 厳密に言えばそうやけど、今では、「棒寿司」と「松前寿司」の区別は、「布きん締め」か
「型押し」かやなぁー。
O: なるほど、どっちも昆布で巻いてるけど、棒寿司は「布きん締め」で、松前寿司は「押し寿司」やねんね。
T: それと、棒寿司は、1本作るのに鯖をまるまる片身使うけど、松前寿司は、基本的に、鯖の片身を使って、2本作れる。小ぶりの鯖やったら、片身使うときもあるけど。
まず、塩をし酢で〆た鯖を、松前寿司専用の木枠に入れ、上にシャリを載せ上から押して作り、松前昆布で巻くのが、今の「松前寿司」やなー。
O: なるほど。ところで、松前寿司専用の木枠があるの?
T: あるよ。わしらは、「丸底」と呼んでる。
O: 丸底?
T: そう、底が平面じゃなくて、丸くなってんねん。船底みたいに、だから、出来上がりが、扇形というか、かまぼこの様な形になる。
O: へぇー、棒寿司も扇形になってるのがいいように、松前寿司も、丸みをもたせているのが、粋やねんね。
T: なんたって、すし屋は、‘粋’が売りやからな。
O: 格好ばっかり・・・
なんとなく違いが、わかってきました。では、次は、「バッテラ」の説明をおねがいします。
T: 「バッテラ」に関しては、ご存知の方も多いと思いますが、皆さんが現在、召し上がっている「バッテラ」と、昔の『バッテラ』は、見た目も形も、全く違うものやったそうです。 

わしも、昔の『バッテラ』を見たことないねんけど、先輩に聞いたら、詳しく教えてくれた。昔作ったこあるらしい。
O: すごい。早よ教えて。
T: まず、魚は、鯖じゃなく、コノシロを使ってたんや。
昔は、コノシロがたくさん獲れて、価格も安かったからやそうや。
O: でも、コノシロを使っていたとしても、「バッテラ」という言葉と、どう結びつくの?
T: 「バッテラ」とは、ポルトガル語で、「小型船」という意味で、幕末から、明治にかけて、みんな、ボートのことを、「バッテーラ」と、呼んでいたそうや。コノシロの頭をとって開くと、ボートの形に似てるやろ。
O: あぁなるほど、あじの開きや、ホッケの開きみたいな形やね。そういえばボートの形してるわ。
T: そして、開いたコノシロを、真ん中で切って、その片身をもう半分に開く。そしたらまた、ボートの形になるけど、今度は、皮の部分が半分、身の部分が半分になるやろ。
O: なるなる。
T: そして、シャリを練って船形にし、コノシロを置いて、布巾で締める。そうしたら、見事に、小船の形をした寿司ができる。当時の人達は、その寿司をみて、「おぉ、バッテーラ(小型船)みたいや」と言ったんやろうな。そこから、『バッテラ』が、出来たそうや。
O: へぇー昔の『バッテラ』も「布きん締め」してたん。
T: みたいやな。そして、その『バッテラ』が、好評で、たくさんの注文に答えられるように、「舟形の木枠」を作り、押し寿司にして、売り出したそうや。以前、わしは、その「船形の木枠」を、見せてもらったことあるねん。
O: すごい。船の形をした木枠があったん。
T: そうや。その船形にあわせて、酢で〆たコノシロを入れて、シャリをのせ、
 上から押して、作ったんや。当時は、上に昆布を巻かず、煮返しをぬっていたから、見た目にもすごく、皮と身のコントラストが、美しかったんやて。
O: 本物のボートみたいやったんやね。あぁー見てみたかったわ。
T: 残念なことに、コノシロの価格が急騰して、鯖で代用するようになり、鯖は、コノシロと違って大きいし、身も分厚いから、鯖を5枚から6枚にへいで(削ぐ)使ったみたいや。
O: 鯖は、大きすぎて、小船にはならへんから、今のような形になったんやね。
T: そうやろうなー。時代の流れやなー。
O: でも、こうやって、昔の『バッテラ』の話を聞くと、今の「バッテラ」になんか愛着がわいてきたわ。たくさんの職人さんの試行錯誤により、守り続けられてんねんねー。
T: 形は違っても、仕事は受け継がれてんねん。
O: 「バッテラ」のあの身の薄さも、受け継がれてるねんねー。
一応、棒寿司、松前寿司、バッテラの話をしましたが、それぞれに違いがあり、それぞれに、職人の技が、生きてるねんね。
T: 奇天烈(キテレツ)なことをしても、やっぱりもとの位置に戻るのは、昔の仕事が、理に適っているからやねんで。だから、寿司の世界に限らず、伝統的なものは、大事にせなあかんし、守り続けなあかん。
O: 伝統的なものを守りつつ、その時代、時代に合った要素を入れていく。
いつの時代も、同じことの繰り返しやねー。では、今回はこれで。
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